秋津野未来への挑戦−さりげなく、ひかえめに 思いを紡ぎだした女性たち

さりげなく、ひかえめに 思いを紡ぎだした女性たち

 上秋津でいま、女性たちのグループがつぎつぎに生まれ、活動を開始している。それは農村の伝統的な食であったり、地域の特産を活かした新製品であったり、里山の雑木林の木の実だったりする。上秋津には、婦人会をはじめJ A 女性の会や生活改善友の会という女性組織が早くからつくられ、地域と女性たちをつなぐ役割をはたしてきた。地域づくり組織である秋津野塾にも、参画している。
 
そうしたなか、最近、開設後順調な運営を続ける農産物直売所・きてらが呼び水になって、相次いで地域づくりの女性グループが生まれているのである。この章では、上秋津の女性たちのあたらしい動きを紹介する。


@ふるさとの香りそれはからたちの花
 2004年1月11日夜、上秋津にある民家に、数人の女性たちが集まった。橙のポン酢を作るためである。「夜の作業に行かないといけないと思うと、仕事や家事の段取りがよくなりました。
 みんな、生き生きしてきました」、久保田地区に住む高垣せりさん(1952年生)の声には張りがあった。高垣さんは、秋津野からたちグループの代表である。
 からたちグループは、1999年、当時婦人会で知り合った女性たちが「地元でとれる橙を加工して、ポン酢を作りたい」、と農業改良普及所職員や地域づくりアドバイザーらに相談し結成した。
 地元には「取り切れないほどの橙がある」、秋津野直売所きてらが開設した年のことである。“からたちさん”は、現在50歳代の女性ばかり6人、いずれも専業農家の主婦だ。

 高垣さんらは、空き家になっていた民家を借りて加工場にし、毎週水曜日を定例の集合日と決め、加工品作りに乗り出した。これまでに商品化した製品は、ウメエキス、ポン酢、ジャム、夏ミカンなどのマーマレード、味噌、径(金)山寺味噌など10種類近くになる。自信作のなかの自信作は橙を使ったポン酢だ。「橙の香りが、何とも言えない。
 ほんものの味です。保存料は、使っていません。一度使ってみてください」、と言って高垣さんは話を続けた。「旬のものを旬に作る。美味しさを味わってほしいですね」。味噌は、農村の母から娘、あるいは嫁にと伝えられ受け継がれてきた家庭の味である。

 からたちグループの女性たちは、加工品作りをはじめてよかったと言う。ポン酢のビン詰めやジャムを作りながら話すのは、農業のこと、家庭のこと、自分のこと。「農業に紛れるだけではなく、いろいろなことに目を向ける場になっている」からだ。地域のなかで五〇代、六〇代女性のふれあいの場が、まったくといっていいほどない現状がある。「いまのグループがなかったら、家と畑の往復になっていたと思います」。高垣さんの言葉は、農家の主婦の胸の内を語っているように思える。「商品を作って売るだけではなく、自分たちの食生活を豊かにしていく、そんな取り組みができればいい」。