夢のなかに出てくるふるさとは

●夢のなかに出てくるふるさとは

 ふるさとの風景は、住民の目にどのように映っているのだろうか。
 上秋津の景観について住民の意識をたずねたアンケートがある。「自然系」、「施設系」、「暮らし系」のあわせて二四項目について五段階評価で答えてもらったものである。ひとびとの評価が一番高かったもの、それは「高尾山の大きな姿」であった。
 高尾山は、市街地のほぼ北東に、秋津野の里を見下すようにそびえる山である。実際の高さ以上に雄大で、どっしりとしたおだやかな山容は、田辺市内のほとんどの場所から眺めることができる。そして、この山に登ると、眼下に田辺の町並みと田辺湾が広がる。田辺湾の東南の方向には白浜町が、そして視線を西に転じれば晴れた日の水平線上に徳島の青い陸地を望める。
 高尾山は、四季折々の山の色で季節を語る。二月ころ、開花した梅林からはウメの馥郁(ふくいく)とした香りがただよう。四月の終わりから五月にかけて、山肌が新緑に覆われて生命感あふれるころ、上秋津はミカンの甘酸っぱい白い花に包まれる。ミカンやウメ畑は、山のふもとから中腹近くまでつづく。緑濃い夏の高尾山、温州ミカンが実りの季節を迎えるころ、山の中腹から下は黄に染まる。そして、農家がミカンの収穫を終える時期には、山には枯葉色が目立つようになる。地域住民が親しみを感じ、季節の移ろいを知る、高尾山の四季である。




景観への評価