いまも、これからも上秋津はミカンとウメの里

Bいまも、これからも上秋津はミカンとウメの里 

 ミカンと並び、和歌山県を代表する特産品は、ウメである。なかでも最大の産地は田辺市と、隣の南部川村、南部町、この三つの市町村で全国のウメの約50%が生産されている。梅干しなどのウメ加工製品は、地場産業がほとんどない紀南地方の経済を支える基幹産業になっている。ウメ産地の名をほしいままにしている最大の理由は、品種にある。南高梅である。大粒で肉厚、皮が薄い南高梅は、ウメの「最高級品」として、消費者の高い支持を得ている。

 南高梅は戦後、昭和20年代に品種改良を重ねるなかで南部川村で生まれた。そして、たちまちとなりの南部町、田辺市にと広がっていったのである。上秋津でのウメの栽培の歴史は、比較的新しい。1960年(昭和35年)の栽培面積は、37ヘクタールにとどまっている。それが活発化していくのは、1975年(昭和50年)ころからとみられる。

 コメ、さらにミカンの生産調整の時代である。農家は水田の転作地、ミカン栽培には適さない水田に、ウメの木を植えていった。いまでは、約350戸の農家のほとんどがウメを栽培しており、「ミカンとの複合経営」をしている。 この地域で栽培されている品種は主に南高梅と、青ウメで出荷梅酒などに使われるろじ古城である。実は6月から7月にかけて収穫され、青ウメとして、また一次加工の白干しウメで出荷される。1999年のウメの収穫量は、1173トン。数字的にはミカンに遠く及ばないが、上秋津の農業を支える二本柱のひとつになっている。 「栽培面積を拡大」したり、「品種の更新をはかりたい」、農家にはそうした意向が強い。

「マスタープラン」作成にともなうアンケート調査で、栽培比率について農家の意向をたずねた。その結果、柑橘類とウメの栽培比率を6対4、あるいは逆に4対6で栽培したいという意向を、40% の農家が示している。「柑橘類とウメをほぼ同じような割合で両立させ、複合経営をはかっていきたい」、柑橘類とウメを柱に生きていきたいという農家の気持ちが表れている。