高齢者がつくため息は

B高齢者がつくため息は


地域の人間関係は変化したか 自然の遊び場は変化したか


 ふるさとの風景。それは、たとえば水田をわたる風に早苗が揺れて緑の波となる瞬間であったり、こどもたちが青い川に飛び込む水しぶきであったり、山の稜線の上の青い空に浮かぶまっ白い雲だったりする。ひとの心を揺さぶり、ふるさとへとかりたてる風景である。それらは、この国のどこにでもあった風景であり、高度経済成長以降の繁栄のなかで、多くの地域が顧みることなく失ってきた風景である。
 
上秋津もまた、変わりつつある。「むかしは、こんなものではなかった」、ため息をつくひとたちの多くは、高齢者である。自然の遊び場は変化したか、という問いにたいして八六%、じつに九割近いひとたちが、変わったと答えている。そして、そうしたひとたちのうち、五七%は自分たちが一○代のころにくらべて「大きく変化した」と回答している。何がそ
れほど「大きく変化した」のか、最大の「変化」は、自然環境の悪化だ。
 こどもたちが、遊びと学びの日ははるか遠くまで続いていると信じ疑わなかった自然は、急速に失われてきた。

高齢者の目に映る、現代のこどものすがたがある。「こどもたちが家の中でばかり遊んでいて、屋外で遊んでいるすがたを見かけない」。外で遊ばないこどもたちは、自然のなかに、楽しさやおもしろさを見い出せないということでもある。「遊びを知らないこどもたち」、だがそれをこどもたちだけの責任にすることはできない。
大人と子どもの関係は変化したか 高齢者の地域活動への参加度



地域活動への参加しない理由

高齢者の、地域に対する見方を語るアンケート調査の紹介を続ける。「地域の人間関係は変化したか」という質問に、約六割、五九%のひとが変化した(「大きく」二七%、「少し」三二%)と答えている。そして、「大人と子どもの関係は変化したか」では七割、六九%のひと(不明の回答を高齢者の地域活動への参加度地域活動への参加しない理由のぞくと八割)が、変化したと考えている。変わったものは、自然だけではない。住民同士の、大人と子どもの、人間関係が変わり、それにともない住民一人ひとりの心のありようも変わった、というのである。高齢者世代の「憂い」を、古き時代への感傷として片付けるわけにはいかない。地域の変化に対する危機感を、彼らの「憂い」のうちに読みとる感受性が求められている。その「危機感」を共有しなくてはならないと考えたとき、秋津野塾の地域づくりは、次のステージに向けて歩みだす。

若い世代と交流したいか 若い世代と交流したくない理由